何から始める?ニッケルハルパを手にしてからやったこと

ニッケルハルパ

スウェーデンの民族音楽、ニッケルハルパ。
不思議な音色と形に惹かれて、この楽器を手にしました。

音楽教室にニッケルハルパのコースはなく、それはつまり先生も存在しない。
Spotifyなどの音楽配信サービスは影も形もない。
海外のWebサイトを探して見つけたCDは玉石混交。
YouTube動画も数が少なく、画質も荒い。

「どうやって弾けばいい?」
「何から始めればいい?」

——そんな戸惑いを抱えながらも、ニッケルハルパが好きで楽しくてひたすらに弾いていました。

時を経ていま、ニッケルハルパを教える人や場所も増え、たくさんの高音質・高画質な音源も数多あり、ニッケルハルパを楽しむ環境はどんどん整っています。
一緒にニッケルハルパを楽しむ仲間も増えてきています。
楽譜はあまり得意でなくても、楽器経験がそれほどなくても、ニッケルハルパを弾きたい、楽しみたい。
構え方や耳の使い方、最初に覚えたい曲、そして壁にぶつかったときのこと。
この記事は、タマダの経験と今の情報を合わせて、ニッケルハルパとの時間が少しでも豊かになればという思いでまとめました。

最初にやったこと——構え方と耳のこと

ニッケルハルパと体の、ちょうどいい関係

ニッケルハルパの構え方は、ちょっと不思議。
首にストラップをかけます。
ギターのように楽器を肩や背中で支えるのではなく、首と肋骨で支えるような姿勢です。
初めて見たときは、首が痛くならないのかと少し戸惑いました。
実際にかつぐと首にかかる負担が大きく、負担を減らせる姿勢で続けられれば体も痛くならないのではと思いました。

ニッケルハルパを長く楽しむために二つのことを意識しています。
体に無理のない姿勢を見つけることと余計な力が入らないこと。
無理な姿勢で続けると、首や肩に負担がかかってしまいます。
体の負担が少ないポジションが見つかると、心地よく音を出せて、ずっとニッケルハルパを楽しめます。
始めたての頃でも、少し経ってからでも、ちょっとでも感覚が変わったらストラップの長さを微調整して、体にしっくりくる位置を探す。
座って弾くときの安定感をキープできるように、首・肩・腕に余分な力が入らないように、それぞれ意識してみる。

「適切な構え方」の正解は自分が一番わかります。
タマダはいまでも鏡を使って姿勢を確認しています。
ちょっと位置をずらして短時間弾いて、また位置をずらしてを繰り返したり。
音と体と対話していくと、最適なポジションが見つかってきます。

16本のチューニング

ニッケルハルパには16本の弦が張られています。
演奏弦(spelsträngar)と呼ばれる4本の太い弦と、共鳴弦(resonanssträngar)と呼ばれる12本の弦です。

演奏弦は、通常低音から C(ド) – G(ソ) – C(ド) – A(ラ) にチューニングされます。
最も低いCは「ドローン弦」と呼ばれ、鍵盤がついていません。
そのため、いつ鳴らしても同じ音しか出ないのですが、曲のところどころで弾くことで曲の重みを増したり、全体の響きを支える重要な役割を担っています。
音の高さを変えられるのはG(ソ) – C(ド) – A(ラ) の三つの弦です。
たとえばヴァイオリンはG(ソ) – D(レ) – A(ラ) – E(ミ)なので、ヴァイオリンの低い音の方から合わせていき、レをドに落とすとニッケルハルパのチューニングになります。

共鳴弦が12本あるのはピアノをイメージするとわかりやすいです。
ピアノの1オクターヴ(ドからド)の中には12個の白い鍵盤と黒い鍵盤があります。
(ド-ド#-レ-レ#-ミ-ファ-ファ#-ソ-ソ#-ラーラ#(シ♭)-シ)
共鳴弦はこの12個の音一つずつに合わせていきます。
どこかしらの音を鳴らすと共鳴弦が一緒に響き(共鳴)、ニッケルハルパの特徴である包み込むような豊かな響きを生み出します。

それぞれの音のチューニングの精度が高いほど、響きも美しくなります。
毎回の練習のたびにチューニングするようにしてから、いつでもニッケルハルパの深い響きを感じることができるようになりました。

百見は一聴にしかず

スウェーデンの伝統音楽・民族音楽には、楽譜には表せないニュアンスやグルーヴ、呼吸のようなリズムがたくさん詰まっています。
そのため、耳でおぼえてそのまま弾くことが一番の近道であり王道です。

もちろんスウェーデン音楽には楽譜もたくさんあります。
実際には備忘録として使うことが多いです。
楽譜に慣れていると大変と思うかもしれませんが、逆に楽譜で覚えようとすると意外と難しいです。
タマダは最初楽譜を使っていたのですが、耳で覚えるのに慣れてからは暗譜ができなくなりました。
耳が身体を変えてしまうのですね。
耳で覚えるようになってから、楽譜を追っていた時には出せなかった自然なノリや表情が出るようになりました。
表現の幅が広がった感覚です。

耳で覚える方法はシンプルです。
まずは好きな曲を何度も聴く。
口ずさめるようになるまで繰り返し聴く。
歌えるフレーズは自然と弾けるようになります。
曲が歌えるようになったら、動画で指使いや弓使いを見てみると、さらにニュアンスやグルーヴが伝わってきます。

ちなみにスウェーデン音楽と楽譜との考えについては「『ポルスカと楽譜』私論」という記事にまとめました。

音はすぐ出るすぐに鳴る

迷わず弾けよ弾けばわかるさ

ニッケルハルパは弓を動かせば音が出ます。
当たり前のようで、とても大事なこと。

ちょっとマニアックな話をすると、ニッケルハルパの弾き方ってフライパンを横から見たイメージなんです。
音が出る時にグっと弓に圧をかける。
余韻で音の長さを決める。
弓を止めて弦から離す。
音を出す練習をするときにギコギコした音を出していたら「しっかり弦がつかめているね」と言われました。
とにかく音を出してみる。それが最初のステップです。

音が出るようになったら、より気持ちよい音を探します。
はじめは音がかすれたり、思ったよりも弱々しい音しか出なかったりしました。
でも、それでOK。
ニッケルハルパは音が出ることそのものを楽しめるんです。
ひとつひとつの音を出すことを繰り返すうちに、音が鳴るようになります。
力の入れ具合、抜き加減がなんとなくつかめるようになると、そこからは早いです。
自分の思う「心地よい音」に近づいていくのが分かります。

楽譜の見方、変わりました?

耳で覚えることに慣れてきたところで、もう一度楽譜を見てみます。
あれ、何か違う。
そんな違和感を持つこともしばしばです。
でも、それが耳で覚える醍醐味です。

スウェーデン音楽って、同じ曲でも誰が弾いていたか、誰から教わったによって微妙に違いがあるんです。
だから極端な言い方をすれば「正解は一つじゃない」。
むしろ正解がないのが特徴です。
だからといって楽譜は不要 というわけではなく、楽譜も十分に役立っています。
すでに覚えた曲を復習するときや、記憶を整理したいときには楽譜でとっかかりをつかんでます。
フレーズの順番を確認したいとき、弾いていて迷子になってしまったとき、他の人と合わせる前に構成をチェックしたいときにざっくりとした譜面が手元にあるだけでも安心できます。
いわば楽譜は「GPS」です。

みんなで弾きたい最初の3曲

音を出すことに慣れてきたら、一曲覚えたくなりますよね。
シンプルで覚えやすく、みんなで弾ける曲があるんです。

premiärlåten(プレミアローテン)
ニッケルハルパだと使う弦はA弦一本だけ。
指のポジション移動がなく弾きやすい曲ですが、この曲は合奏の時に威力を発揮します。
セッションなどでこの曲が流れると、誰かしらがアンドラステンマ(サブメロディー)を弾き始めます。
シンプルなメロディーにいろいろな音がどんどん積み重なっていき、いつしか壮大な合奏になっているのです。
スウェーデン音楽の深みにはまるきっかけとなる曲に間違いありません。

Polska efter Båtsman Däck(ポルスカ・エフテル・ボーツマン・デッキ):
そこが日本でもスウェーデンでも、ニッケルハルパ弾きなら誰でも弾くポルスカ。
この曲は指のポジション移動はないものの、弦の移動があります。
プレミアローテンに慣れてきたら、次はこの曲で一緒に弾きませんか。
ウップランドのボンドポルスカ(Bondpolska)というリズムで、独特の揺れるリズムがあります。
何回弾いても、まだまだ先がある感じがするんです。
スウェーデン音楽の特徴、揺れるリズムにはまるきっかけにもなります。

Slängpolska efter Byss-Calle No.32(スレンポルスカ・エフテル・ビス=カッレ):
ボーツマン・デッキと同じく、このポルスカもニッケルハルパ界隈では誰もが弾いてる超有名曲。
YouTubeでも多くの演奏動画が上がっています。
スレンポルスカ(slängpolska)というリズムで、男女が手をつないで歩くというシンプルなダンスで演奏されます。
ダンサーさんがウキウキするような気分を表現するように弾くとこっちまで楽しくなる、とても好きな一曲です。
気分がよくなるとテンポがあがってしまうところだけ注意。

スウェーデンでダンス伴奏をした時の動画です。雰囲気が伝わればうれしいです。

迷わず聞けよ聞けばわかるさ

せっかく手にしたニッケルハルパ。
楽しくて弾き続けてても、
「うまく音が出ない」
「この動きがつかめない」
といった壁にぶつかることがあります。

そんな時、ひとりじゃないです。
誰かに聞けば乗り越えられるはず。
自分では気づけなかったクセ、難しいと思っているところ。
ちょっとしたアドバイスで数週間の練習が一瞬で解決することもよくあります。

オンラインや対面のワークショップ、個人レッスンやセッションなど、いろいろな人と話ができる環境が整いつつあります。
ニッケルハルパを弾いている人はみんな面倒見がいいです。
遠慮なしにどんどん聞くのが一番です。

ニッケルハルパ、君といつまでも

ニッケルハルパ。
音も見た目もユニークな楽器。
「いいな」「好きだな」という気持ちでどんどん弾きまくれる。
自分のペースで楽しみながら、助けてくれる人が周りにいる。
昨日より今日、今日より明日。
もっともっと、ニッケルハルパが好きになる。

ニッケルハルパを手にしてから次の一歩を踏み出せたならうれしいです。

あわせて読みたい:

一緒にニッケルハルパを楽しみませんか。

タイトルとURLをコピーしました