スウェーデンの伝統音楽に興味があるんだけど、まず何を聴いたらいい?
スウェーデンの民族音楽のおすすめは何?
こういった質問を受けることがよくあります。
スウェーデンの音楽に興味をもっていただけるのは本当にうれしいのですが、実はこれ、とても難しい質問なんです。
「え!?」「あ〜」「うぅ……」と、つい言葉に詰まってしまうこともしばしば。
なぜなら「スウェーデン音楽」と一言で言っても、その中に含まれる音楽はあまりに多様で、どこから紹介するべきか一概に決めることができないからです。
「スウェーデン音楽」とひとくちに言っても…
まず大前提として、「スウェーデン音楽」と一括りに言っても、その中には本当に多種多様な音楽があります。
私が紹介したいのは、
「スウェーデンの伝統音楽/民族音楽/民俗音楽」
あるいは
「伝統音楽/民族音楽/民俗音楽に根ざした現代的な音楽」ですが、実際にはクラシックもあればポップスもあり、ジャズ、ロック、メタル、現代音楽まで含まれていて、幅はとてつもなく広いのです。
そして「伝統音楽/民族音楽/民俗音楽」に絞ったとしても、簡単に語り尽くせるものではありません。
※この後出てくる「スウェーデン音楽」は、基本的に「スウェーデンの伝統音楽/民族音楽/民俗音楽」という意味で捉えてください。
地域によってまったく違う音楽性
※以下に挙げる地域ごとの特徴は、あくまで私自身が演奏やダンスの中で感じてきた印象に基づくものです。演奏家や時代、曲によって異なる場合がありますので、参考程度にご覧ください。
スウェーデンの伝統音楽は地域によって大きく異なり、それぞれに独自の個性があります。
例としていくつかの地方を挙げると:
ウップランド地方(Uppland)
ニッケルハルパの伝統が息づく地域。
リズムはやや重く、旋律は素直で力強い。
落ち着いたテンポと重心の低さが特徴で、しっかりと地面を踏みしめるような演奏。
旋律は直線的で素朴ながらも奥深い表情があります。
→ ウップランド地方の「ブンドポルスカ(Bondpolska)」は、私が最も愛するポルスカです。
ダーラナ地方(Dalarna)
自由で即興的な旋律、変則的なリズム、洗練された装飾が特徴。
どこか精神的で儀式的な雰囲気もあり、フィドルの表現力が試されます。
→ スウェーデン音楽の多様性といえば、まずダーラナ地方を思い浮かべる方も多いのでは?
イェムトランド地方(Jämtland)
ノルウェー文化の影響を受けた広々とした旋律。
速めのテンポで跳ねるような演奏が多く、野外でのダンスにも適した力強さが魅力です。
→ 「イェムトストローク(Jämtstråk)」という独特の弓使いが、この地方の特徴を色濃く反映しています。
スモーランド地方(Småland)
静かで内省的な雰囲気。
繊細で詩的な旋律が多く、静寂の中に感情がにじむような深みがあります。
→ クラシック音楽の「ポロネーズ」に近い印象があり、踊るよりも「聴く」音楽です。
ヘルシングランド地方(Hälsingland)
技巧的で装飾が多く、華やかさと哀愁が共存。
情緒豊かな旋律が印象的です。
→ ニッケルハルパで演奏するにはチャレンジングですが、それでも弾きたい曲がたくさんあります。
演奏者のタイプによっても変わる
演奏スタイルの違いも、音楽の印象に大きく影響します。
- アーティスト/ミュージシャン型
ライブやコンサート中心。
自由な解釈やアレンジが多く、CDや音楽配信サービスでも聞きやすいスタイル。 - スペルマン(spelman)型
ダンスや結婚式など、地域の日常の中で演奏するスタイル。
生活の中の音楽としての側面が強く、地域性が色濃く出ます。
ウーロフ・ヨハンソン(Olov Johansson)のように、両方のフィールドで一流の活動をしている奏者もいます。
楽器によって変わるおすすめ
どの楽器を演奏しているか、またはどの楽器が好きかによっても、おすすめは変わります。
- ニッケルハルパ:ウップランド地方の曲をまずおすすめします。
- フィドル(ヴァイオリン):ダーラナやヘルシングランドが魅力的。
- アコーディオン:特定の地域よりも、アンサンブルの響きを重視して聴くのがおすすめ。
- ギター:何も言わずにRoger Tallroth(ローゲル・タルロート)を聴いてほしい!
「初めての人におすすめの曲」を選べない理由
たとえば…
- ジャズが好きな人には?
- アイリッシュ音楽が好きな人には?
- ニッケルハルパの音色をじっくり聴きたい人には?
- 不規則なリズムを楽しみたい人には?
……といったように、聴く人の好みによって「おすすめ」は大きく変わってしまうのです。
私自身、これまでにたくさんのスウェーデン音楽のアルバムを聴いてきましたが、どれも違って、どれも良い。
その中からどれかひとつを「おすすめ」として挙げるのは、本当に難しいと感じています。
だからこそ、「テーマ別」に紹介したい
とはいえ、
気になっているけど、どこから入ればいいのかわからない…
というあなたの力になりたい。
そこで私なりの視点でスウェーデン音楽を紹介するシリーズを始めることにしました。
今後ご紹介する予定のテーマは:
- ニッケルハルパの響きを楽しみたい人向け
- バンドアンサンブルを楽しみたい人向け
- とにかくノれる曲が聴きたい人向け
- 変なリズムを聞いてみたい人向け
- ○○地方のダンス音楽… など
中には複数のタイプに登場する曲やアルバムもあると思いますが、それもまたスウェーデン音楽の多様性の表れです。
第一回目は「ニッケルハルパの響きを楽しみたい人向け」
ニッケルハルパ弾きとして向き合ってみたいと思います。
最後にちょっとしたヒント
- アーティスト/ミュージシャン型の音楽は、CDや配信サービスで比較的手軽に聴けます。
ロックやポップス、アイリッシュなど他の国の音楽が好きな人でも入りやすいはず。 - スペルマン型の音源は自主制作CDが多いのでYouTubeで探すのがおすすめ。
見つけたら、ぜひお気に入り登録してみてください!
あなたの興味に合いそうな回があれば、ぜひ読んでみてください。
リクエストなども大歓迎です!