ついに、というかようやく、というか。
2024年夏、Zornmärketに挑戦してきました。
結果は「Diplom」授与。
評価は「för lyhört spel av upplandslåtar på nyckelharpa」
英語(機械翻訳)にするとfor sensitive playing of Uppland songs on the nyckelharpa
同じく日本語(機械翻訳)では「ニッケルハルパによるウップランドの歌のレスポンシブな演奏のために」
Zronmärket に興味のある方に向けて、あれこれを記録します。
今年の旅の記録は別にご紹介する予定です。
きっかけ
実は、というかもちろん、というか。
ニッケルハルパを始めた時からZornmärket, Riksspelman のことは知っていました。
Olov Johannson, Anders Mattsson, Markus Svensson, N.H.O, などなど。
好きなニッケルハルパ弾き、好きなバンドのことを調べると必ずと言っていいほど出てくる言葉。
「Riksspelman」
スウェーデンのフォーク音楽における資格、というか称号というか。
一つの証のようなものとしてあこがれの対象です。
ただ、実際にどのようなものかは分からず、ただただ漠然としたものとして感じていました。
ニッケルハルパを弾いてはや幾年。
自分の今の演奏、スウェーデンのフォーク音楽に対する思い。
そういったものをスウェーデンの人はどう見てくれるのか。
確認したい思いがどんどん募ってきました。
直接のきっかけは2023年秋。
来日したPer-Ulfが演奏を聞いてほめてくれたこと。
その時はダンスの伴奏で弾いていたのですが、踊りやすい、上手だと。
スウェーデンの人、ましてやPer-Ulfにそういわれたことでボルテージが上がり。
その勢いでZornmärket に挑戦しよう!となったのでした。
申込から準備
Zornmärket の情報がサイトに載るのは大体1月くらい。
申し込みは若干ずれて2月末とか3月くらい。
僕は3月に申し込みをしました。
試験は事前申し込み制。
費用は1100クローネ。
レートをざっくり1クローネ=15円とすると16500円
早割りもあった記憶が。
6月くらいまではキャンセルすると一部返金があります。
申し込みの際に申告することは以下でした。
- どの地域の音楽を演奏するか
- 楽器は何か
- 楽器の説明
- 演奏可能な日
- ガンムリア野外音楽堂での演奏を希望するか*
- コメント
*Umeå にある屋外のダンスホール。申込時はよくわからなかったのでとりあえず演奏したいと返事。
これらをZornmärket のサイトで入力して申し込みをすると受付と振込先情報などを記したメールが後日届くようなシステムでした。
基本的にスウェーデン語でのやり取りになるため、語学が得意でない僕は翻訳ソフトなどを駆使して何とか申し込みができました。
振込をどのようにすればよいか(手数料の安さ、手間の少なさ)を旅行経験豊富な方々にいろいろお聞きして、最終的に選んだのは「Wise」というサービスでした。
申し込みが完了したら旅行の手配です。
この時点では自分の演奏がいつになるかわからないので、飛行機の注意点を調べておくことに。
ニッケルハルパを現地で調達できる人は気にしなくてもよいのですが、
僕は左利きのため、自分のニッケルハルパをもっていく必要があります。
そのためニッケルハルパを機内持ち込みにできるところがあるのかから飛行機選びが始まります。
その他は安さで選ぶか航空会社で選ぶかなど様々です。
当初は全日空がストックホルム直行便を就航するというニュースが出ていたのでそれにしようと考えていたのですが、あれよあれよと延期の情報が出てきました。
結局2025年になるみたいですね。
なんやかんやで飛行機を確定させたのは5月くらいになってしまいました。
Zornmärket に向けて~選曲
Zornmärket では最低3曲を弾く必要があります。
また、スウェーデンの伝統に即した音楽である必要があります。*
*例えばFinnskogs Pols は対象外とはっきりと注意書きがあります。
僕はニッケルハルパでウップランドの演奏をすると申告したので、もちろんウップランドの曲から選びます。
3曲をどれにするか。
とても悩みました。
この時点で本番の様子や基準など全く分からず、また曲もあらゆる可能性があります。
選曲そのものがスウェーデンのフォーク音楽を理解しているかどうかをはかるものとして、
Zornmärket に大きな影響を与えるとも考えました。
より幅広く選ぶか。
絞りに絞って一転突破を目指すか。
僕は後者を選びました。
北部ウップランドで伝承されてきたニッケルハルパの曲に絞りました。
具体的にはビス=カッレを軸にしつつビス=カッレ以外の曲を弾くことに。
曲種はGånglåt(行進曲), Sextondelspolska(16分音符のポルスカ:Slängpolska), åttondelspolska(8分音符のポルスカ:Bondpolska) から各1曲ずつ。
この判断がよかったのか悪かったのかはいまだにわかりません。
選曲に対する審査員の評価はなかったからです。
Leif Alpsjö に相談したらいい選曲だと言われました。
今思うと少し頭でっかちになっていたかもと感じます。
もっと感覚的に選んでもいいかな、と。
当日の様子
事前に割り当てられた試験時間の少なくとも45分前には来た方がよいと事前にアナウンスされます。
僕は7/16の13:45からだったので13時に会場着。
まずは受付をします。
名前、演奏する曲、結果が出た後のフィードバックを求めるか、土曜日のステンマの生き返りのバスは予約するか、など。
あと写真も撮られました。
会話は英語で大丈夫でした。
実際にはスウェーデン語で畳みかけられるので、「アー、ウー、アイドントスピーク…」ともごもごしてると英語で話しかけてくれる感じです。
受付が済んだら控室で練習してよいよ、と控室に案内されます。
ここで本番前の最後のチェックをして自分の順番が来るのを待ちます。
いざ本番。
とても、とても緊張しました。
場所はホールの舞台上。
観客席を背にする形でスタンバイします。
目の前にはジュリー(審査員)が3人控えてます。
ジュリーは事前に知らされているのですが、本当にいるのかという感じです。
僕はMarkus Svensson とほか二名。
左側には立会人のような人が一人。
最初に立って弾くか座って弾くかを聞かれます。
僕は座って弾くことを選びました。
座ると簡単な自己紹介をします。
このやり取りでMarkusから「どうやってニッケルハルパを勉強したのか、だれに教わったのか」といった質問が。
youtubeやCDを聞いて勉強してます。
と答えると一瞬変な表情に。
その理由は後日分かることになるのですがこの時は自分アピールでいっぱいでした。
そのあと一曲目の演奏に。
最初に曲を伝え、弾く。
弾いた後で「君はどうやってこの曲を覚えたのか。誰の動画を見たのか」との質問。
二曲目、三曲目も同じ質問をされました。
僕はニッケルハルパを演奏したので、基本的にジャッジをしているのは(ペンを動かしているのは)Markus一人でした。
なんやかんやであっという間、というか緊張していて自分の演奏を振り返ることもできないくらいでした。
結果は毎日掲示されるので、自分の演奏が終わったらそれまで自由時間。
終わったのが14時くらい、発表は16時頃。
会場内に集まっていたほかの演奏家たちとバスキングをしながら待つ。
気が気でない反面、出し切れなかった悔しさを引きずる。
バスキングをしていると、音を出しているとどんどん緊張がほぐれていくのがわかる。
むしろ先にバスキングをしてから演奏に向かいたかった。
などとあれこれ考えてしまうほど。
現地の音楽家と一緒に音を出すことが楽しくて仕方がない。
やっと本来の姿に戻ってきたなとこの時感じました。
16時過ぎに結果発表。
最初に書いた通りDiplom。
同じ日にSilverを取ったのは二人。
一人はニッケルハルパの人だったのですがバスキングにもいなかったので話すことができず。
もう一人はクラリネットのMarkus Mattsson。
バスキングで一緒に弾いたのですが、本当にうまい。
ああ、Riksspelmanは違うなと肌身にしみました。
フィードバックは順番に一人ずつ。
だいたい10~15分くらい。
僕は10番目くらいだったので17時半過ぎくらいからでした。
フィードバックは人によって長さが違うのでバスキングもできず、どこかに行くこともできず、
ただ何もせず待つだけ。
長い。待つ時間はとても長く感じました。
フィードバックは良い点と残念な点をそれぞれ。
良い点はyoutubeやCDなどでよく覚えてきたね、ということ。
残念な点はボウイングと指回しの不安定なところ。
こうやってフィードバックをもらえることで次回の課題にできるのがいいシステムと思いました。
今回Zornmärket の直前にシルベルバスハルパの弓を入手したので急遽本番でも使ったのですが、
ジュリーのひとり、Karinから「その弓はなんですか」と質問を受けたので説明をする。
最後にMarkusにずっと昔からN.H.Oの音楽を聴いてきて、今日審査をしてもらえてうれしかったですと伝えて終了。
とにかく初めてのことだらけであっという間でした。
今後の目標
次回も挑戦します。
来年か、再来年か、その次か。
気持ちは来年ですが、フィードバックされたことをきちんと消化してからという感じです。
おまけ
非スウェーデン人。
スウェーデンでの留学経験なし。
youtubeやCDで勉強してきた。
こういった経歴が珍しいらしく、Zornmärket と地元の新聞社からインタビューを受けました。
これもびっくり。
Zornmärketのサイトにインタビューが載ってます。
※英語で書かれています。